「出会ってくれてありがとう」桜芽吹く春の日、永遠の23歳になった君へ伝えたい【鹿児島市A型事業所】
私がありがとうと伝えたい人は、高校時代の一つ下の後輩だ。
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彼との出会いは、中学二年の頃。
教室が隣だったこともあり、彼は、私の教室によく遊びに来ていた。
一緒にスポーツをしたり、雑談をしたりした。
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私は、高校一年生になり入寮することになった。
寮生は50名以上おり、ここで、やっていけるのか心配になったが、その後輩は寮の案内を買って出てくれた。
そして、嬉しそうに「何時から朝ごはんで。」「ここは、勉強だけをする場所で。」など、一つ一つ説明してくれた。
彼は、学校では後輩だが、寮では先輩なのだ。
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三年生になったとき、私は、寮長に選ばれた。
選ばれたと同時に、50名の寮生をまとめていかなければならない責任が生まれた。
私は、副寮長に後輩を指名した。
彼ならやってくれるだろうと思ったからだ。
彼は、最初は断っていたが何とか承諾してくれた。
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その後、色々な事があった。
19時に始まった集会が、終わる頃には時計の針が23時を回っていた事もある。
あの時は次の日が土曜日で、学校が休みで良かったと安堵したことを覚えている。
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その後、我々は卒業し、社会人として働いていた。
社会人としてからも良く遊びに行き、お互いの目標を語り合ったりもした。
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ある日の深夜に、メールが来た。
「息子が亡くなりました。葬儀場は○○で」
私は、彼のいつもの冗談だろう。にしても酷すぎるから、一言(ひとこと)言わないといけないなぁ。
すぐに電話を掛けた。
数秒後出たのは、彼ではなく彼の母親だった。
全てが事実だった。
そこから先の記憶がいまでもあまりない。
彼の母親が言うには、私は、話を聞きながら泣いていたらしい。
彼は、旅立ってしまった。
私は、死の実感がまるでなかった。
まるで熱にうなされ、朦朧(もうろう)とした感覚だった。
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しばらくして、彼の実家から連絡があり、挨拶にいった。
骨壺になった彼を見て私は、今更ながら初めて、彼の死を実感した。
その瞬間「順番が逆だろう。私の方が先輩だぞ。お前は、見送る側だろう。お前は後輩で、私の友人なんだぞ。早くそこから出てこい。」
そんなことを頭の中で叫んでいた。
こんな別れになるとは思わなかったが。
「出会ってくれてありがとう。生まれ変わることがあるのなら。今度は、お前が先輩で私が後輩だな。」
空を見上げ私は、彼に届くことを願った。
桜芽吹く春の日。彼は、永遠の23歳になった。
≪文:P・N≫







