令和2年度 鹿児島県強度行動障害支援者養成研修~基礎研修~を受けて D.Y

先日、鹿児島県民交流センターに於いて2日間、鹿児島市知的障害施設連絡協議会の主催による、
鹿児島県強度行動障害支援者養成研修~基礎研修~が開催され参加してきました。

30名の参加者でしたが、大会議室にて一人一人の間隔を大きく開け、体温検温、消毒など
コロナウィルス対策を施した万全の態勢で行われました。

研修の内容として、
・強度行動障害の理解
・支援の基本的考え方
・強度行動障害の状態
・行動障害が起きる理由
・障害特性の理解
・困っていることの体験
・障害特性に基づいた支援
・行動を見る視点
・特性の把握と適切な対応
・チームプレイの必要性
・支援手順書に基づく支援の体験
・行動障害と虐待防止
・児童期及び成人期における支援の実態
・家族の気持ち
等が行われ、これらの項目を2日間に渡り北海道・茨城の先生方とリモートで結び、
講義・講習という形で実施されました。


①“なぜ強度行動障害の状態になるのかを学び、そして予防の重要性・軽減方法を学ぶ”
強度行動障害が軽減されることが最終目標ではなく、
強度行動障害という状態になっている人、状態になりやすい人が
地域の中で安心して幸せに生活することだということを確認し学びました。

■強度行動障害とは■
・自傷・他傷・こだわり・もの壊し・睡眠の乱れ・異食・多動など
本人や周囲の人の暮らしに影響を及ぼす行動が著しく高い頻度で起こるため
特別に配慮された支援が必要になっている状態を意味しており、
もともとの障害ではなく、その人の状態のこと を言います。
中学生~高校生だと、『思春期だよね』で片づけられてしまいますが、
〇不安や緊張から → 「逃れたい」
〇不安や緊張を → 「伝えたい」
〇不安や緊張に → 「気付いてほしい」
でも方法が分からない。そんな気持ちを行動で表しているということです。
・適切な行動を教えられていない
・周囲が誤った対応を繰り返す
このように不安や緊張が解消されずにいると更に行動が激しくなっていき、
「強度行動障害の状態」と言われるようになります。

本人の特性に合わせ、「合理的配慮」を行うことで「分かる」「快適」「充実」「安心」が芽生え、
社会参加が進み、地域の中で安心して幸せな生活ができる。これが大きな最終目標になります。


②強度行動障害における障害特性の理解
強度行動障害と自閉症の関連性が高いと言われています。
自閉症、正式には「自閉症スペクトラム症」もしくは「自閉症スペクトラム障害」と呼び、
社会性やコミュニケーションの困難、想像力の困難が判断基準となり、感覚の特異性も診断の際に考慮されます。
人は、情報を脳で処理して行動をしていますが、自閉症は脳の機能的な障害をもっていることで、
・認知の違い
・認識の違い
・理解の違い
これらの相違が生じて、「行動の違い」になっていくということになります。
これらの自閉症の特性として、“強み”“弱み”と言い換えることもできます。
【強み → 支援に活かす】【弱み → 支援者が配慮するところ】
自閉症の人たちの特性を常に学び、支援の基盤に置く必要があります。


③困っていることの体験 
参加者同士、グループに分かれての演習として「困っていることの体験」をしました。
用意された文章をジェスチャーで他のメンバーに伝えていく。
短い単語だと伝わりやすいが、長い文章になってくるとジェスチャーでは伝えるのが極端に難しくなり、イライラ、もどかしくなるといった感覚になりました。
ここでは“伝えられないもどかしさ”を体感することにより、強度行動障害の方々の困惑を実感することができました。
気持ちを伝えたいけど、うまく伝えられない
支援していく立場としては非常に大事な体験となりました。


④支援のアイデア 障害特性に基づいた支援
支援の流れとして
ⅰその人の特性や人生のニーズを把握する
ⅱその人の特性に配慮した支援を考える
ⅲその人の人生のニーズに沿った計画と実践、評価や改善のサイクル(PDCAサイクル)で、よりよい人生へと向かう
ⅳ支援が停滞したり強度行動障害の様相が現れたりしたときは、改めて支援を見直し、支援の補整や補強をする

これらの内容を踏まえて、“目で見てわかる支援”が基本になっており、
これは、分かりにくい情報や生きにくい環境で暮らしている人たち、一人一人に分かりやすい形で届けたり整理したりする必要があるからです。
■その人に合わせた支援
■合理的配慮
構造化のアイデアで一人一人のオリジナルの支援を実施していく
〇確実に伝えたい6つの情報
~・いつ・どこで・何を・どのくらい・どうやって・次は・~
〇これらの6つの情報を確実に伝えるために5つの工夫を行う
・時間の工夫・場所の工夫・方法の工夫・見え方の工夫・やり取りの工夫

ここでの大きな目標として、言われるがまま(または好き放題)ではなく、自分で適切に情報をキャッチし行動できることを大事にすることです。
例:一日のスケジュール
・文字だけで書き連ねるのか?
・イラストや写真を使用し分かりやすいもので表現する
・1日分表示するのか?半日分だけの表示にするのか?
・スケジュールの事柄を完了したら外す、チェックするなどの工夫
※何をするのか?見てすぐにわかる情報を提示し、理解を助け、伝えあい分かりあうコミュニケーションを図る。

本人の行動は「困っている」サインかもしれない →
〇本人の行動をヒントに
〇特性に気付き
〇適切な支援を組み立てていく
→ 支援も本人の活動も成功しやすくなっていく


⑤チームプレイの必要性
一人の方に対して、複数の支援者・関係者が関わります。
・グループホーム・生活介護事業所・病院・家庭・行動援護移動支援
それぞれ関係者が必要な支援や特性を共有することが重要となってきます。
それぞれの関係者が本人の特性に関係なく思い思いのやり方で接すると、本人が混乱してしまう。

そこで統一した支援を行うために
・日頃から頻繁なやりとりをする
・個別の支援会議
・サービス等利用計画
・個別支援計画
・支援手順書
などがあります。
〇コミュニケーションの苦手さを補う支援や困りごとの背景にある障害特性や環境要因を知り、
 自己決定のための本人にあった情報を提供する
〇支援機関がそれぞれどのような役割を果たしチームで支えていくのか
〇どのような目標をもち、何に配慮して支援していくのか具体的な支援内容
これらの内容で以下の流れを構築していきます。
■支援手順書に沿って支援を実施
■支援した様子を記録する
■記録を振り返り、その人にあった支援か確認する
■必要に応じて支援手順書の内容を改善する
正しい状態像をつかみ、チームで情報共有し、支援効果の確認を行う
これらの流れが支援のベースを作っていきます。


他にも“行動障害と虐待防止”“家族の気持ち”と様々な視点から2日間学ばせて頂きました。
ただ、その行動を抑えつけるのではなく、なぜこの行動に至っているのかを考査し一人一人にあった支援を行っていく。
本人は【困らせている】のではなく【困っている】ということ、何かを伝えようとしていることが分かりました。
とても有意義のある2日間となり、これらの知識を活用していき今後の業務にも反映させていきたいと思います。
ありがとうございました。

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